でも、
隠し通すなんて無、

「響子ちゃんっ!!」

まさに助け舟!!

私が俯いていた顔をあげると看護婦さんが鼻息を荒くして、こちらに迫ってきていた。

「まったく!!どこにいたの!?先生とお話するって言ったでしょ!!
・・・あら、拓郎くん。どうしたの?」

隣の青年に気付くと、態度を一変させ、驚いた顔付きになった。

「あ、いや、ちょっと用事がありまして。」

あどけない笑みで答えを返すと私の方をちらりと見た。

「そっかー。診察があるんだね
じゃあ、さよならっ」

そのまま青年は立ち上がると、ドシャ降りの雨が待ち構えている扉まで歩いていく。

「さよーなら。
さぁ、響子ちゃん、行きましょう。」

看護婦さんに腕を引っ張られながらも、青年の背中を見つめていた。

「あ、そーだ!!
俺の名前、崎村拓郎!!
18歳!!」

にかっ、とさっきとはまた違う笑顔を見せると、扉をくぐり抜けていった。

崎村拓郎(サキムラタクロウ)

それがあの青年の名前。




「・・・変な子。」

それが俺が見た彼女の第一印象。

ずっと何かを追っているような視線。
けれどそれは虚しく宙を舞っているだけで。

彼女の事を知ろうとして隣に座ってみたが

やけに無口。

「って、俺はこんな事しに来たんじゃねぇよっ」

頭を掻きむしって空を見上げた。

まだ、雨だ。