慌てて身を隠すが、もう遅かった。

私に近づく足音がする。

それと同時に心臓が破裂するんじゃないか、ってくらい心音の早さが増していた。

「・・・やっぱり。あの時の」

気が付くと青年は私の前に微笑みながら立っていた。

「隣、いいですか?」

何故敬語なんだろう。こんな私に。

断る訳もいかず、いや、断りたくない私は頷いた。

私の隣に青年は腰掛けると小さな沈黙が流れた。

このような状況に陥った時、私は自分の障害を呪いたくなる。

たくさんたくさん聞きたい事あるのに、

聞けない。

それに、
この障害を青年に話すのが

怖い。

この病院に入院しているから、何かをわずらっていると彼も思っているだろう。

だから尚更
周りの大人みたいに

可哀相な子だと、

青年にだけは思われたくなかった。

「・・・あの、名前、聞いてなかったよね?」

口を開いたのはもちろん青年だ。

「よかったら教えてもらえる?」

俯いている私に覗き込むように問い掛けた。

どうしよう。

やっぱり言わなきゃいけないのかな。

言いたくないよ。