涙が出そうなので、上を向く。

でもそんな事したって無駄で、生暖かい涙が私の冷たい頬に流れていく。

ごしごしと手で無理矢理拭き取って歩き出した。

私は
惨めで孤独だ。
声も出ないし記憶もない。
何をしでかしたのかも知らない。
でも、
もういいんだ。
声が無くても、記憶が無くても
生きていける。
惨めでも孤独でも。

ねぇ、だから神様。
私に少しだけの
シアワセをくれませんか?
ほんの少し、おすそ分けしてください。
そしたら
もっとちゃんと
現実が受け止められそうだから。


行き場の無い私はうろうろしながら仕方なく待合室に下りる事にした。

この辺りじゃ簡単に見つかってしまう。

とにかく誰も私を知らない所に行きたかった。

あんな風に暴れた自分が

今更恥ずかしくなったのだ。

待合室はいつも通り殺風景だ。

私は1番奥の椅子に腰掛ける。

薄汚いがふかふかしていてぽすりと私の体を包み込んだ。

しとしとと雨の音。

もう8月なのに梅雨みたいな雨。

変なの。

「だーかーらー俺は患者じゃありません!!」

・・・へ?

まただ。
ーーーーあの声。



それは
神様がくれた
私へのシアワセでした。