「慧くん…慧くん」

小声で練習をしていると、平野くんが戻ってきた気配を感じ声をかけた。


「平野く……え、何で?」

隣に座ったのは平野くんではなく…

「水樹くん…?」

だった。


「逞が場所変われって言いに来た」

「そ、そうなんだ」

平野くん、そういうことだったんだね。


水樹くんを呼びに行ってくれたんだ?


「でも何で逞と隣なの?紗良ちゃんと逞ってそんなに仲良いんだっけ?」

「あ、わたし元々ここじゃないから…訳あって移動してきただけで…」

「訳あって?」


水樹くんの真っ直ぐな瞳がわたしを捉えている。


「わ、和子…があんな感じで…」

と和子のほうを見ると、水樹くんも理解してくれたようだった。

「なるほど。それは仕方ないね」