そう言って立ち上がると、彼女は悔しそうな顔をしたまま走って行った。

「あ、ちょっと!」

彼女のことを追いかけようとした水樹くんの腕を咄嗟に掴むと笑いかけた。


「ほんとに大丈夫だから。帰ろ?」

行ってほしくなかった。


彼女を追いかける水樹くんの姿を見たくなかったのだ。

「紗良ちゃん…ごめんね?俺のせいで」

「ううん、それは違うから」


水樹くん絡みではあるけど、でもこれは水樹くんのせいなんかじゃない。

だから謝らないでほしい。


「ケーキはまた今度にしよ?」


さすがにこの雰囲気でケーキは食べに行けない。

今日は大人しく帰ろう。

「何かされた時はちゃんと言ってね?紗良ちゃん、そういうの言わないから心配になる」

と水樹くんの顔が曇っていく。


「何かあった時は言うけど…でも何もないと思うから」