「そうだったね。遅くなるし行こっか」


水樹くんは慌てたようにカバンを持つと、一緒に教室を出た。

下駄箱に行くまでの間、お互い無口だったけど、不思議と気まずさはなく…


むしろ心地よく感じた。

修学旅行中に慧くん、と呼べるように頑張ろう。

それまでに気持ちを作るんだ。


「あっ、」

下駄箱へと続く、階段をおりている時だった。

水樹くんがポケットに手を入れながら、そんな声をもらした。


「ごめん、スマホ忘れた!すぐ来るから下駄箱で待ってて」

水樹くんはわたしの返事を聞く前に来た道を戻って行く。


仕方ない。

下駄箱で待ってよう。


階段をおり、下駄箱に着くとローファーに履き替えた。


「あの、」