「そう、だね」

ほんとはケーキなんて今はどうでもいい。

ただ名前を呼びたいだけなのに、どうしてわたしはそれくらいもできないんだろう。


「じゃ、急いで書きあげないとだね」


水樹くんはそう言うとペンを走らせる。

結局名前を呼べないまま、ひたすら日誌を書きあげていく水樹くんを見つめることしかできなかった。


名前を呼ぶくらいのこと、簡単だと思っていたわたしを殴ってやりたい。

自分が悔しい…。


「よし、終わり!お待たせ」

日誌を閉じるなり、わたしに視線を向けた水樹くん。

「け……っ」


…っはぁ…やっぱり言えない。

「ケーキだよね?わかってる。どこで食べて行く?」

水樹くんはそう言いながら立ち上がると、教卓へと日誌を置きに行く。


気づくとその背中に抱きついていた。