嫌なんかじゃなかった。

照れるけど、やっぱり嬉しい。


「ならよかった」

と水樹くんが微笑む。

再び日誌に視線を落とす水樹くんのことを、下の名前で呼んでみたい。


思えば、みんな水樹くんのこと、下の名前で呼んでるよね。

女子で苗字呼びしてるのは、わたしだけなんじゃないだろうか?

そう思うと無性に呼んでみたくなった。


「…け…っ」


慧くん、と呼びたいのに声が出ない。

「け?」

と水樹くんが首を傾げる。


「…け……ケーキ!食べたいな〜って」

「あ、ケーキ?紗良ちゃん甘いの好きだもんね。帰り食べて帰る?」

と水樹くんの笑顔が苦しい。


慧くん、って呼べない自分が歯痒い。