平野くんはチラッと視線をこっちに送ると言葉を続けた。


「夏目さんの気持ちさえブレなければ、慧にもその気持ちは伝わるはずだよ」

と口角を少しあげる平野くん。

「慧ってさ、夏目さんが思ってる以上に夏目さんのことが好きだよ」

「えっ…」


カッと顔が赤くなるのがわかった。

平野くんが言ってくれたことは本当なの?


だとしたら嬉しい…けどやっぱり恥ずかしい。


「奈々も、慧の気持ちには気づいてるよ」

「……」

「奈々もさ、前向くって言ってる」

そう言った平野くんに視線を向けると目が合った。


「慧の誕生日…それを言いに行ったんだよ、奈々。ケジメとして最後に抱きしめさせてほしい、ってお願いしたんだって」

「ケジメ…」

「ケジメで抱きしめさせてっていうのもおかしな話しだと思ったけどね」