蚊の鳴くような声で謝った真咲くんに物足りなさはあったけど、もうどうでもよかった。

それよりこの場所から早く出たかった。


「平野くん、もういいよ。行こ?」

と平野くんを半ば強引に引っ張りながら教室を出た。

「ありがとね……ありがとう…」


少し歩くと堪えていた涙が溢れる。

何とも言えない感情が襲いかかってきては、その度に情けない気持ちに…。


「夏目さん、とりあえず保健室行こ?ここ、結構腫れてるし冷やそ?」


と平野くんは自分の頬を指さしながら顔を歪ませる。


「…うん」

力無く返事をすると、教室前を素通りして保健室へとやってきた。

「氷持ってくるから座ってて」

平野くんはきびきびと動くと、すぐに氷の入った袋を手渡してきた。


「ありがとう」


お礼を言うとヒリヒリと痛む頬に袋を押し当てた。