奥の空き教室に入ると向き合う形になり、何となく俯く。


「呼び出してごめん。すぐ済ませるから」

「……」

「夏目さん俺のこと知ってる、かな?」

と聞かれ顔をあげるけど…


名前がわからない。

顔は見たことあるし、同じ学年ということは知っている。


「ごめんなさい、ちょっと…」

他のクラスの子の名前まで覚える余裕なんて、わたしにはない。

というより覚える気がない、が正しいかも。


「そうだよね。じゃ、今日から覚えて?俺、大津真咲。よろしくね?」


ーー大津真咲[おおずまさき]

彼は自己紹介をするとニッコリ笑う。


「大津、くん…」

「真咲でいいよ。夏目さんのことも紗良って呼んでいいかな?」

「あ、はい…ど、どうぞ」