校舎内で1人になれる場所なんて、わたしは一つしか知らない。

そこに足を運ぶと鍵を閉めた。


手で涙を拭きとると、マスカラも一緒に落ちてしまったようで真っ黒に。

せっかく和子に可愛くしてもらったのに…。


もう色々と悲惨すぎる。

何より『奈々』と呼んだ水樹くんの声が消えてくれないから困る。


はぁ…着替えとけばよかった。

とサンタの衣装に思わずため息がこぼれる。


それにしても3階はとても静かだ。

一つ下の2階までは賑やかだったのに。


だから聞こえてしまう…

誰かが近づいてくる足音が。

それが誰なのかわかってしまうから心臓が持たない。


その足音は案の定ドアの前で止まった。


大丈夫。

鍵だって閉めてるし、反応さえしなければ諦めて去ってくれるはず。