気がついたら部屋が明るくて、ゆうちゃんはもう居なくてあたしはソファで1人きりになっていた。
身体を起こして昨夜の出来事を必死で思い起こした。
あれから限界がきてしまったようで記憶が全くない。服は着てるし、思っていたより部屋は散らかっていないし、目は回るけど気分は悪く無かった。

だけど何かが全く違うような感覚だけがそこにあった。何かが新しく始まってしまったような、半分幸せで半分物哀しいような不安定な感覚。
テーブルの上のスマホを確認すると、ゆうちゃんから「帰るねー。お邪魔しましたー。」とメッセージが来ていた。

グループで会話した事はあったけど、個人でやり取りするのははじめてだった。
まっさらな画面に送られたそのはじめてのメッセージをあたしはしばらく眺めていた。自分が踏み込みたいのかこのまま立ち止まったままでいたいのか、分からない。ただ「昨日、好きな人にキスをされた」それだけは消えない事実だった。

それからテスト期間に入って暫くの間、グループで集まることも無かった。
ゆうちゃんから連絡は一度も無い。日が経つごとに、連絡が無い意味をあたしは理解し始めていた。
『酔った勢い』多分、そうゆう事だったんだろう。
自分が急浮上してある日突然彼の特別になる事なんて無いとあたしはどこかで知っていた。元々抱いていた予感が的中しただけだしきっと深入りすると傷つく相手だ。なるべくゆうちゃんとの事は忘れる方向で、あたしは気持ちを整えていた。