「どういうこと?」
ゆうちゃんの口元が半分にやけたカタチで止まった。目の色が冷たく変わってさっきまで柔らかかった表情が消えていく。
あたしは今にも涙が出てきてしまいそうで暫く口を開かずにグッとこらえていた。
「あぁ…。男?」
大好きなゆうちゃんの声。『男』という単語の語尾が甘く上がる。あたしは頷いた。ゆうちゃんの顔から血の気が引いて歪んでいくのが分かった。
「彼氏ができたの。」
あたしは嘘をついた。声が震えないように気をつけながら。『彼氏』と言う単語がなんだかものすごく切なくて、余計に泣きそうになった。
「なにそれ。」
ゆうちゃんの纏っている空気がピリピリチクチク変わっていく。それは戻れないところに足を踏み入れた合図だった。
「ごめん…。」
消えそうな自分の声が遠くに聞こえる。想像以上の後悔に襲われてあたしは気を失いそうだった。
「分かったよ、じゃあね。」
ゆうちゃんの口元が黒いマスクで覆われる。そのまま立ち上がるとゆうちゃんは行ってしまった。遠のいて行く背中を見つめる。心が嫌々と激しく首を振っている。『これでいいんだ』と、何度も自分に言い聞かせる。
こんな時ですら、ヒソヒソ話をするさっきの女子高生たちが気になって泣けなかった。ティーラテをゆっくりと飲む。シロップ抜きの生温い液体がトロリと喉を落ちて行く。
あたしはあたしの目の前に居てくれる普通のゆうちゃんが大好きだった。でもゆうちゃんは、どんどん手の届かない人になっていってしまうから。
ここからはあの女子高生たちとあたしは同じ。
今からゆうちゃんは、あたしの『推し』になるんだから。
ゆうちゃんの口元が半分にやけたカタチで止まった。目の色が冷たく変わってさっきまで柔らかかった表情が消えていく。
あたしは今にも涙が出てきてしまいそうで暫く口を開かずにグッとこらえていた。
「あぁ…。男?」
大好きなゆうちゃんの声。『男』という単語の語尾が甘く上がる。あたしは頷いた。ゆうちゃんの顔から血の気が引いて歪んでいくのが分かった。
「彼氏ができたの。」
あたしは嘘をついた。声が震えないように気をつけながら。『彼氏』と言う単語がなんだかものすごく切なくて、余計に泣きそうになった。
「なにそれ。」
ゆうちゃんの纏っている空気がピリピリチクチク変わっていく。それは戻れないところに足を踏み入れた合図だった。
「ごめん…。」
消えそうな自分の声が遠くに聞こえる。想像以上の後悔に襲われてあたしは気を失いそうだった。
「分かったよ、じゃあね。」
ゆうちゃんの口元が黒いマスクで覆われる。そのまま立ち上がるとゆうちゃんは行ってしまった。遠のいて行く背中を見つめる。心が嫌々と激しく首を振っている。『これでいいんだ』と、何度も自分に言い聞かせる。
こんな時ですら、ヒソヒソ話をするさっきの女子高生たちが気になって泣けなかった。ティーラテをゆっくりと飲む。シロップ抜きの生温い液体がトロリと喉を落ちて行く。
あたしはあたしの目の前に居てくれる普通のゆうちゃんが大好きだった。でもゆうちゃんは、どんどん手の届かない人になっていってしまうから。
ここからはあの女子高生たちとあたしは同じ。
今からゆうちゃんは、あたしの『推し』になるんだから。