ゆうちゃんが歌い終えて、配信を終わらせた瞬間、気がついたらあたしは部屋を飛び出していた。

息が、苦しい。走って走って大通りに出てタクシーを捕まえる。乗り込んで行き先を伝え息を少しずつ整える。ゆうちゃんの歌で飽和した気持ちが今にも心から溢れそうだった。いつだっていきなり押しかけて来るのはゆうちゃんの方だったのに。

見慣れた建物が見えて来る。タクシーを降りてエントランスに向かう。髪を整えて息を吸って祈るような気持ちでインターホンを鳴らした。暫くして目の前の自動扉がゆっくりと開いた。

部屋のチャイムを鳴らすと、ゆうちゃんはすぐにドアを開けてくれた。

ゆうちゃんの顔を見た途端、また涙が溢れていた。
ゆうちゃんの表情が柔らかく崩れていく。

「どうしたの。」

背中でドアが閉まる音がする。

「ごめんね。ゆうちゃん、ごめんなさい。」

あたしはゆうちゃんの身体に腕を伸ばす。ゆうちゃんの背中に腕を回して、胸に顔を埋めた。ゆうちゃんの匂いを吸い込んで息を吐く。見上げると目の前にゆうちゃんの顔があった。

「あたし、ゆうちゃんが好き。」

あたしが伝えると、困ったように黒目がちの大きな垂れ目が優しく笑っていた。




fin