車のドアを勢いよく閉めて、エンジンをかけながらふっと思った。

さやはどうやって帰るんだろう。

ここから駅はちょっと距離があるし、せめて帰り道だけでも送ってあげれば良かったのかも。
でも今更何を思っても遅いよなぁ、仕方なく車を発進させる。

大人げなくて、短気な自分がほんと情けない。だからフラれたのかもしれない。でも男が出来たってなんなの。いきなりすぎる。普通にうまくいっていた気がしてたのは俺だけ?
最後に部屋に来たのは確か2週間前だった。あの時は本当に珍しく手料理をしてくれた。さやが料理する姿なんて初めて見たし、あんまり美味しいからうっかり「結婚しちゃおっか。」なんて言いそうになって辞めた。そんな急に結婚とか言われても引かれちゃうかもしれないって。でもあの時、ちゃんと言ってればこんなことにならなかったのかも。いや、ダメでしょう男がいる奴にそんな事言っても困らせるだけじゃん。やっぱ言わなくてよかった。
でも、おかしいな。そもそもあいつの彼氏って俺じゃなかったっけ?付き合おうって言ってなかったんだっけ?あれ?

「マジかぁぁぁ。なんなの?女ってなんなの。」

頭の中がぐしゃぐしゃする。泣きたい。本当に泣いちゃうかも。絶対、この後普通に過ごせない。曲作りとかできる心境なんかじゃない。俺だって遊んでたかもしれないけど、最近は全然そんな事なかったし。まさか、急にさやを失うなんて思ってもみなかった。