「おおーー。久しぶりぃー。」

ニヤニヤしたゆうちゃんが玄関に現れる。大きなスーツケースを引きずって。

「どうしたの?」

「え?大阪のイベントの帰り。マジ起きてて良かったぁ。」

ゆうちゃんは悪びれもせず「お邪魔しまーす。」と靴を脱いだ。そのまま遠慮なく部屋に上がり込む。外のムッとした熱気とお酒の匂いを纏って。
あたしはゆうちゃんの後についてリビングへ入った。

「酔っ払ってる?」

あたしが尋ねるとゆうちゃんは振り返って、トロンとした目であたしを上から下まで眺めた。

「なにその可愛い寝巻き。」

ゆうちゃんはいつになく舌ったらずだった。どうやらかなり酔っ払っている。

「大阪からそのままここに来たの?」

「うん。…来ちゃだめだったぁ?」

ゆうちゃんは猫なで声を出した。そして1歩2歩とあたしに歩み寄り、あたしの髪の毛を手に取った。
そしてまた「だめ?」と言い、今度は首を傾げる。
長い前髪の隙間から眠そうな目がねだるようにこっちを見ている。そんな顔しないでよ。忘れようとしていた気持ちが一瞬で舞い戻ってきてしまうじゃない。

「お水飲む?」

なんとか、まともな雰囲気に戻したくてあたしは言った。