【渚side】
あーあ。
「んんっ……」
「かわいい顔して寝ちゃって……」
風呂から上がって寝室へ行けば、
先にベッドで待っていたはずの彼女がスヤスヤ眠っていた。
さすがに今日は疲れたかな……。
学校行って、デートして、それで。
「ほんっと……余裕ねーな、俺……」
帰ってきて、くつ脱ぐ手間も惜しいくらいにむぎにキスしまくってしまった。
電話越しに聞こえたむぎの驚いたような声。
そのすぐあとに聞こえた男の声。
なにが起こってるのかはわからなかった。
でも、むぎのそばに男がいる。
それだけで頭が狂いそうになるくらい、走って走って。
「っ!!」
俺がむぎの肩を引く直前、彼女に他の男がふれようとしていたその事実に、血の気が引く思いだった。
やっと克服できそうになってきた体質を。
やっと受け入れて、乗り越えることができそうになっている今の現状で。
もしまたあの体質のことで傷ついたら。
悲しむような、泣くようなことがあったら。
そう思ったら、碧たちの前でも、家に帰ってきてからも。
周りの声が聞こえないくらい、かっこ悪いほど余裕なくして。