***


「なっ、ぎ……ふっ、」

「っ……はっ、」


バタン。

それから帰ってきてそうそう。


「っ……なぎ、っ、あっ」


ドアがしまったとたん。

後ろから抱きつかれて、あごを持ち上げられたと思ったら、すぐに熱い唇が落ちてきて。


「口あけて」

「ふっ、あっ……!」


「ん、そう」

「んっ、な、ぎ……っ」


「もっと力ぬいて……ん、上手」


「なぎ、さ……っ」

「むぎ……」


キス、激しい……っ。


角度が変わって、唇がまた重なるたびに、全身にゾクゾクってなにかが駆け巡って、頭がぼーっとして。


聞こえる水音と、口の中を動く熱い舌に全身が支配されていくみたいで。

もう言葉も、みっともない声を出すことしかできない。


「顔、とけてる。めちゃくちゃかわいい」

「うっ、あ……」


そっと離れた唇の上をゆっくり指がなぞって。


「えっろい顔……理性ぶっ飛びそう」


またゾクゾクって感覚にびっくりしてたら、視界がじわりとにじんで、渚の袖を掴むしかない。


「ん、袖じゃなくて、こっち……俺に腕まわして」


グッと腰を引き寄せられて、お互いの肩に顔がぶつかる。


「っ、やぁ……っ」

「ん、声もっと甘くなった。
かわいい……っ、もっと聞かせて?」


そしたら、背中をつつーとゆっくりなぞられて、


「ふっ、なぎ……!」

「大丈夫だよ、そのまま……」


シャツの中に熱い手がすべりこんでくる。


「うっ、あっ……」



じかにトントンって、熱い手が私の背中をなぞる。


っ……服があるかないかの違いって、こんなに大きいの……っ?


ふれるたびに体中がジンジンして、自分が自分じゃなくなっていくみたいな。


涙が、とまらない。

怖い。


もう沼みたいな、足がつかない場所にひたすら落ちていく感覚に、渚、渚って、ぎゅっと腕に力をこめる。


「ん、俺ならここにいる。むぎのことずっと抱きしめてる」


「うっ……ぁ、」


「だから大丈夫だよ、ぜんぶ安心して俺に預けて。涙も声も我慢しないで」