正直なところ、デートに誘われたことにびっくりした。
付き合ってから、買い物は一緒に行ったけど、いわゆるデート、みたいなことはしてない。
土方くんが那咲を誘うの見て、したくなっちゃったとか?
私もできたらなって思ってたから、今はすごく楽しいけれど。
「まあ、そうだな。
ふつうにふたりで遊びに行ったことはあったけど、デート、はしたことなかったし。放課後デートって言うの?ずっとしてみたかったんだよな」
渚の声がいつもより弾んでる気がする。
他の人にはわからない。
きっとずっと隣にいる私だからこそわかる、微かなちがい。
渚も私と一緒で楽しいって思ってくれてるんだって、それだけで心があったかくなって、嬉しい。
「けど俺は、ふだん一緒に家にいるときも、学校いく時もデートしてるって思ってるから、どこか特別な場所に行くのもそうだし、行かなくてもむぎといるときはいつも楽しいし、十分幸せだよ」
「っ〜〜!!」
私の体質のこともあって、外に遊びに行くのも気を使ってくれてるって思ってた。
でもそれはまちがいだった。
使われてるどころか、渚はいつどこででも、私と一緒ならなにをしてても楽しいんだって。
「あとはまぁ、碧にお礼も兼ねて」
「お礼?」
「うん。俺たちとのこと、応援してくれてたから、次は俺が応援したいと思って」
少し照れくさそうな声に、またキュンとする。
男友達といる時の渚は、ちょっと口が悪くてぶっきらぼうだけど、誰よりも友達思いで、そんなところも私は大好き。
「今日は学校終わりだからアレだけど、今度はふたりきりで、私服デートしような」
「うん」
「もちろん、お家デートもな?」
「っ、ばか……」