「ふー、無事決まってよかった!
久遠に見せるのが今から楽しみだね!」

「私は疲れたんだけど……」


ていうか、まだ見せるって決めたわけじゃないし……。

それに選んでもらったやつ……あー、もう!

思い出すだけではずかしいっ!!


「えー?
でもあたしの目に狂いはないから、久遠のやつ、ぜったいメロメロになるわ!」


「め、メロメロ……」


「なんなら鼻血噴き出して倒れるんじゃない?」


「それは怖くない……?」


「じゃあ待たせてるふたりに電話かけよっか」

「そうだね」


お店を出て、ふたりで少し壁側に寄る。

見れば時刻はもう18時。

そろそろ帰んなきゃかな……。


プル。


「もしもし」


はっや!

ワンコールめで出るとか早すぎ……!!


「お、終わったよ」


「了解。今からそっち迎えにいく。
近くになんか分かりやすい店とかある?」


「あっ、えっと、本屋さんの前にいる。あっ、でも、私たちがそっち行くよ、待たせちゃったし。今どこ?」


「俺が行くからむぎたちはそこにいて。
ここ、人多いから」

「わかった」


直接は言わないけど、きっと体質のこと、気にしてくれてるんだと思う。

私が男の人とぶつかったりしないように。


「ありがとう、渚」

「急に素直になんのやめて……心臓にクるから」


「え?」


「なんでもない、こっちの話。あと時間も時間だし、そろそろ帰るかって碧と話してて。合流したら帰ろ」


「わかった。じゃあ、またあとで……」

「待って」


「え?」


「このまま電話、つないどいて」


「え?ど、どうして?」


「むぎと通話することなんてほとんどなくて新鮮だし……」


「うん、」


「ちょっと離れてただけだけど、むぎの声ずっと聞いてなかったみたいな感じするから、合流するまでこのまま聞いてたい。だめ……?」


「っ、だめじゃない」


「よかった」


少し寂しそうな声に、のどの奥がグッてなる。


オレもそうしよっかなー。

なんて、電話の向こうで土方くんの声が聞こえて。


土方くんもいるのに、ほんとはずかしい……。


「すぐ行くから。待ってて」

「うん……」