「声、がして……」
「声?」
「うん……その、渚、の……」
「俺の?」
「うん……」
「俺、なんて言ってた?」
「そ、それは……って、なんでそんなニヤニヤしてるの!?人が真剣に話してるのに!」
「ふっ……ごめん、続けて?」
今のどこに笑う要素が?
少しイラッとしちゃったのに渚は、うれしさを堪えきれないって感じで口元に手を当てていて。
めちゃくちゃ喜んでるっぽいんですけど……。
「なに自意識過剰なこと言ってるんだって、思うかもしれないけど、」
「思わねーよ、そんなこと」
むぎの言うことはぜんぶ正しい。
ぜ、全肯定……。
「な、何度も好きだって言って、私のこと……呼んでた気がし……」
「ぶはっ!」
「はあ!?」
だからっ!なんで
「大爆笑!?」
「くくくっ、」
「なっ、なにがおかしいの!?」
どうしてもって言うから必死にはずかしいの我慢して教えたのに!
「ははっ、あーあー」
私がキッと睨みつけてるのに、ずっと笑ってて、こんなにうれしいことなんかないってくらいに。
「も、もうっ、渚なんてしらないっ」
ばかばかばか。
人の気も知らないで。
やわらかく細められた瞳はただただ私を愛おしくてたまらないって目で。
それは、夕日に負けないくらいのまぶしい笑顔。
めったに全力笑顔にならない渚だからこそ。
その表情に、私がどれだけドキドキしてるかも、翻弄されてるかも知らないで。