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「◎なんて、ほんとむぎらしいっていうか、なんていうか」

「うっ、だってはずかしくて……」


放課後、那咲とふたり、玄関へと続く廊下を歩く。


「けどさ、隣の校舎からこっち見てるのに気づくなんて。愛の力は偉大だ、ってやつ?」


「……もう、この話やめない?」



はずかしさMAXなんですけど……。


渚実はと紙越しに会話してるのを他の子にも気づかれちゃって、めちゃくちゃニヤニヤされて。


那咲なんて、もうずっっっとその話してるし。



「だってむぎ、めちゃくちゃかわいいんだもん」


「それはこっちのセリフだよ……」



お世辞抜きにして、同性の私から見ても美しいって思うくらい、美人な那咲。



サラツヤストレートな黒髪ポニーテールは抜群に似合ってるし、


ふだんは落ちついたサバサバ系のお姉さんって感じなのに、笑ったときにできるえくぼとか、三日月型になる目とか。


話しているときとそうじゃないときのギャップがすごくて、私が男子ならきっとイチコロ。


「土方ー」

「渚お待たせ。待った?」


それから広場のほうへ行けば、土方くんも渚もすでに来ていて。


「おっ、来たか!」

「はぁ……やっと会えた」


「ちょっ、渚!?」

「わーお」

「あたしたちいるんだけど」


渚と目が合った瞬間、気づいたときには抱きしめられてて。


「死ぬほど会いたかった……」


確かめるように、ぎゅうっと力がこもって、掠れた低い声が耳に流れ込んでくる。

っ、ふっ、ふたりが見てるっていうのに……!


「うちのやつに声かけられなかった?」


「そ、それは大丈夫」


「よかった……かわいいからほんと心配」


「あの、なぎ、さ……」


軽減されたとはいえ、症状、なくなったわけじゃないから……!

こんな人が多いところで、しかも土方くんたちがいる前で症状を出すわけにはいかないから……!