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「つーかホテルのスイートで同棲って、さっすが大手リゾートの一人息子!」


「その言い方やめろ」


「つか、くっっそ楽しそう!!
オレ超遊びに行きたいんだけど!部屋見たい!!
今度行っていい??」


「ぜったい来んな」


ちぇー、ケチ。

なんて口を尖らしてるけど、ぜんぜんかわいくない。

ぜったいニヤニヤしながら変な妄想するだろ、こいつ。

この部屋でどうとか、ああだとか。

プールとか浴室とか見られた暁には……ぜったいいやだ。


「けどさ、まじでやばかったよな、渚」


「なにが?」


「いや、ほらさ〜、一時期星見と登下校してないときあったじゃん?ここ1ヶ月くらい。あのときのおまえ、完全に目えイッちゃってたよ」


「あー……」


「クラスのやつら、みんっな、おまえのこと怖がって震え上がってた」


あのときは、たしかに。

自分で言うのもアレだけど、ほとんど記憶ないくらい荒ぶってた自信しかない。


1ヶ月、離れてたもんな……。


正直1日だけでも頭狂いそうだったのに、もはや途中からまじであのとき死んでたんじゃね?ってくらい、あの1ヶ月の記憶がすっぽり抜けてる。


声を聞かない、話をしない、目が合わない。

俺にとってむぎは、幼なじみで、彼女で、婚約者ってだけじゃなくて。


少し離れるだけで生きた心地がしないほど、大切で、大好きで、愛おしい、俺の生きがい。


「なのに離れてたと思ったら、同棲始めて、しかもペアリングて。つけてんの見たとき、まじでいっぺん死んだかと思った」

「それは言いすぎ」

「いやいやまじだって」


どんな恋愛の仕方だよ!?ってツッコミたくなったもん、俺。

なんて苦笑いの碧の前で、太陽の光に反射して輝く指輪を見つめる。


とにかくむぎが欲しくてしょうがなくて。

両思いだってわかったときは、もう今となってはかっこ悪いほどに必死だった。


デートして、付き合って、キスして。


確かに他の人から見れば、そんなちゃんとした順序があるだろって思われるかもしれない。


だけど……。


「けどさ、ふたりが幸せならいいんじゃね、順番なんて」


「碧」


「元々幼なじみなんだし、ずっと両思いだったわけだし。親も認めてるなら、周りがどうこう言う話じゃねーよ、そんなん。いろんな形の恋愛があって良いと思うよ、オレは」


「……碧。めちゃめちゃイイこと言ってるけど、実際どうなの、森山とは」


「っ、はああああ!?」