「……」

「……」


っ、あー……。

これは。

ぶわっと体の中心に熱が集まって、ゾクゾクっと鳥肌が立つくらい、背筋を熱いなにかが駆け抜ける。


ドクンドクンドクン。


俺のネクタイで目隠しされた彼女が、火照って首まで赤くして、荒い息づかいで俺を見てる。


かわいい。好きだ。

めちゃくちゃにしたい。

今すぐすべてを俺のものにしたい。


庇護欲、独占欲、支配欲、征服欲。

ドロドロとしたものが一瞬頭をよぎったけれど。


「なぎ、さ……?」


不安げに揺れるその声に、ハッと目が覚めた。


なに考えてんだよ俺……ばかじゃねーの。


むぎがそれを望んでくれるなら話は別だ。


でも、そうじゃないなら。


身勝手な俺の自己満だけで、何よりも誰よりも大切で大好きで彼女に、そんなこと、絶対にしたくない。

ただでさえ、真っ暗でなにも見えてないって状況で、不安にさせて。


やっと、やっと手に入ったこの幸せを、ずっと何度も夢見ていたこの幸せを、絶対に手放したくはないから。


ぎりっと歯を噛んで、体に溜まった熱を逃がす。


それをするのは今じゃない。

今は我慢、我慢だ。


とにかく安心させることが第一優先。

大丈夫、俺はここにいるよって、口を開こうとしたとき。


あ……。


むぎの目から一筋の涙がこぼれて。


瞬間。

もうとっくに限界を超えていながらも、必死に目を逸らしていたやわい理性。


ブチッ────。


限界まで張りつめていたそれが、勢いよく切れる音がした。