「久しぶりに皆と顔合わせてさ、蘇ったの。昔一緒によく遊んだじゃん」

「ほかの奴も交えて、だろ」

「そうだけど、特別じゃなかった?」

 お互い、私たち───

 そう続けた彼女の言葉に、脈が大きく荒波を立てた。思い当たる節があったからだ。


 同じテニスサークルに所属した同級生で、女子が苦手な僕が唯一話を弾ませた女子。それが目の前の彼女だった。

 社交的で、太陽のように明るくて……でも、どこか笑顔が笑っていない女の子。

 ───「なんで無理して笑ってんの」

 何がきっかけでそう言ったか、どこで言ったか、なんて覚えていない。

 でもおそらく、これが引き金だったのだろう。

 それから彼女は事あるごとに僕を気に掛け、諸々の集まりにも無理やり参加させられた。


 ───「ねぇ、何飲んでるの?それ美味しい?」

 あるときは、僕のグラスに薄い唇を寄せてきたり。

 ───「あ、やばい……終電逃した」

 あるときは、僕だけに聴こえるよう、そっと耳打ちをしてきた。

 常に男の影があった彼女に、僕は何も期待はしていなかった。

 それでも、いざというとき〝友人〟として僕を頼ってくれることは嬉しかったし、満更でもなかった。


 きっと、彼女の中で僕は〝特別〟なのだろう。

 四年間、その言葉で必死に虚無感を埋めていた。