目の前に立っていたのは、樹くんだった。
キョトン、と二人で固まる。樹くんはニコニコしながら片手にビニール袋をぶら下げていた。不機嫌そうだった巧の顔がさらに険しくなる。
「なんだよ」
「せっかくだからさー兄弟水入らずで飲もうかと思って!」
彼は持っているビニール袋を掲げた。なんとも無害そうな笑顔である。
巧ははあーとため息をついて言った。
「お前が俺を飲みに誘うとかどんな魂胆あるんだよ」
「失礼だなあ、そういうんじゃないのに」
「いや、さっきだって飲んだだろ」
「親がいないとこで飲んで親睦深めなきゃ!」
あれだけ巧を毛嫌いしていた樹くんの発言に目をチカチカさせた。突然どうしたんだろう? この機会に巧と仲直りしようとしてるなら賛成だけど……
うーんどうも違うような??
「でもこんな夜遅くに来るなよ、飲むならまた今度時間設けて」
「旅行先で飲むのがいいんじゃーん!」
「樹、あのな」
「いいじゃん、巧と杏奈ちゃんは別に家帰ってからでもいつだって一緒なんだし。これから先もいっぱい旅行とか行けるだろうし? ここは可愛い弟に少しは付き合っても。巧が事故った時杏奈ちゃん呼んであげたの俺だよ?」
ぐっと巧が押し黙る。借りだ、と確かに樹くんは言っていた。
巧が私を見る。まさか追い返すわけにもいかず、苦笑して言った。
「まあ、ちょっと飲もうか?」
「イエーいおじゃましまーす」
樹くんはすぐさま中へ入り込んで履いていたスリッパを脱ぎ捨てた。隣にいる巧は頭を抱えている。
「ほら、仲直りするならいい機会だよ」
「あいつが本当にそんな目的できたと思ってんのか」
「え、だって……」
小声で話す私たちを振り返り、樹くんがにこやかに言う。
「さささー! 三人で飲もう飲もう!」
ちょっと飲もうか、と私は言ったのだが。
それから缶チューハイ一本を飲み干した樹くんは、
全然顔色の変わらない様子で「酔っ払ったー」と大声で叫び、並べてある布団にダイブして寝入ってしまったのだ。
キョトン、と二人で固まる。樹くんはニコニコしながら片手にビニール袋をぶら下げていた。不機嫌そうだった巧の顔がさらに険しくなる。
「なんだよ」
「せっかくだからさー兄弟水入らずで飲もうかと思って!」
彼は持っているビニール袋を掲げた。なんとも無害そうな笑顔である。
巧ははあーとため息をついて言った。
「お前が俺を飲みに誘うとかどんな魂胆あるんだよ」
「失礼だなあ、そういうんじゃないのに」
「いや、さっきだって飲んだだろ」
「親がいないとこで飲んで親睦深めなきゃ!」
あれだけ巧を毛嫌いしていた樹くんの発言に目をチカチカさせた。突然どうしたんだろう? この機会に巧と仲直りしようとしてるなら賛成だけど……
うーんどうも違うような??
「でもこんな夜遅くに来るなよ、飲むならまた今度時間設けて」
「旅行先で飲むのがいいんじゃーん!」
「樹、あのな」
「いいじゃん、巧と杏奈ちゃんは別に家帰ってからでもいつだって一緒なんだし。これから先もいっぱい旅行とか行けるだろうし? ここは可愛い弟に少しは付き合っても。巧が事故った時杏奈ちゃん呼んであげたの俺だよ?」
ぐっと巧が押し黙る。借りだ、と確かに樹くんは言っていた。
巧が私を見る。まさか追い返すわけにもいかず、苦笑して言った。
「まあ、ちょっと飲もうか?」
「イエーいおじゃましまーす」
樹くんはすぐさま中へ入り込んで履いていたスリッパを脱ぎ捨てた。隣にいる巧は頭を抱えている。
「ほら、仲直りするならいい機会だよ」
「あいつが本当にそんな目的できたと思ってんのか」
「え、だって……」
小声で話す私たちを振り返り、樹くんがにこやかに言う。
「さささー! 三人で飲もう飲もう!」
ちょっと飲もうか、と私は言ったのだが。
それから缶チューハイ一本を飲み干した樹くんは、
全然顔色の変わらない様子で「酔っ払ったー」と大声で叫び、並べてある布団にダイブして寝入ってしまったのだ。