ネットで写真は見ていたけれど、実物は断然すごい。テンションが上がるがまま、早足で建物に近づく。
館内に入ったときには、気持ちはますますたかぶった。
ふんだんに木材が使われている空間。天井がびっくりするほど高くて、開放感がものすごい。
木の香りと本の匂いが混ざった空気は最高で、書架の数も圧巻の多さ。
すごい、本がたくさん……!
ほかの人と目が合わないよう気をつけることは忘れずに、わたしはさっそく、今日のお供を選びにかかった。
図書館に来るときはいつも、これを読みたいというようなことは決めてこない。
背表紙を見て回って、ピンときたものを手に取る。運命的に新しい物語に出会えることが、すごく楽しいんだ。
そうして見て回ること、五分ほど。
わたしはあっと、一冊の本に釘付けになった。
本のタイトルは、【夜の雨】。背表紙は深い藍色で、流れるような文字でタイトルが書かれている。
夜。雨。そこから雨夜くんのことが頭に浮かんでしまうのは、至極当然の流れだった。
……雨夜くんは今日、なにをして過ごしているのかな。
完璧かつ大人びた笑みを思い浮かべ、わたしはくちびるを内側に巻き込む。