――頑張りたい。

昨日家に帰ってから、改めてそう思ったんだ。


ずっと、ひとりではどうしたらいいかわからなかった。

どうにかしたくて、でもどうにもできなくて。ノートに気持ちを書きなぐるしかできなくて。


でも、こんなチャンスをもらうことができたんだ。こじらせたコミュ障を克服できるように、頑張りたい。

過去から、トラウマから……抜け出したい。


「……すごいね」


雨夜くんの〝すごい〟が、鼓膜だけでなく胸の中心を揺らす。

くちびるを一文字にしていると、雨夜くんが構えていたノートをゆっくり下げた。


真っすぐに目が合う。雨夜くんの瞳が、黒じゃなく深い茶色をしていることに、はじめて気づく。


「……なんか、俺のが照れるかも」


そう言ってはにかんだ雨夜くん。

怖いという感情とはべつの感情のせいで、ドキッと心臓が跳ねた。