――永田さんがいいなら、俺、毎日でも来るから。
その言葉通り、雨夜くんは次の日も、わたしに会いに図書室に来てくれた。
「お疲れさま、永田さん」
「〜お、お疲れさま……!」
緊張はする。ものすごく。
けれどもう、二日目は昨日みたいに、手足がふるえたりしなかった。
雨夜くんを信頼できる優しい人だって、ちゃんと認識できたからだと思う。
信頼できて、優しくて……そして配慮が行き届いている紳士な人。雨夜くんは、交換日記のときに思っていた人柄そのものだ。
声を返すことができたわたしに、雨夜くんは「ありがとう」とほほえんだ。
「すごいね、永田さん」
「……えっ」
「昨日の今日で、すごくはっきり声が出せてる」
肯定の言葉を口にして、昨日と同じ、対角線上の席に座る雨夜くん。
そしてカバンからノートを取り出すと、スッと顔の前に構えた。
「あ……っ」
「ん?」
わたしが思わず上げた声に、雨夜くんが首をかしげる。
「あ、あの……」
「うん」
「えっと……その……っ」
いくつもはさんでしまう、無駄な音。
用意した言葉が喉奥に引っ込んでしまいそうだったけれど、それをなんとか引き止めて、不格好にわたしは言った。
「の、ノート……なくても、だ、大丈夫……っ!」