思いきりくらったダメージは、そのあと時間が進んでも、回復してくれることがなかった。

会話の流れの書き出しは、一切できないままで。

そして時間が経てば経つほど緊張も大きくなってきて……わたしはわけが分からなくなって、泣き出しそうになっていた。


そのうちとうとう、時計の針が午後五時を回った。

図書委員も出て行って、室内にポツンと取り残される。


静まり返った室内。雨夜くんがもうすぐ来ると思うと、いよいよ緊張は度を越して、手足がカタカタとふるえ出した。


「……っ」


あわてて右手を左手でおさえるけれど、左手もふるえているから意味がない。

異常なふるえに、一気に怖さが噴出する。


やっぱりダメだ。会話の練習なんて、わたしには無理だ。

もう逃げ帰ってしまおうかと、最低な衝動に駆られたときだった。


――コンコン。


「……!」


図書室のドアが、二回ノックされた。


息を止め、目を見開いてドアを見つめる。

逃げることも、視線をはがすこともできないでいると。


「永田さん……いる?」

「……っ」


聞こえてきたのはまぎれもなく、昨日から脳内リピート再生していた声。

すでにマックスだと思っていた心拍数が、上限を越えて跳ね上がった。