……不良のたまり場になっていたり、しないかな。
髪で顔を隠しつつ、ビクビクしながらドアを開ける。
そして拍子抜けする。中には、人が全然いなかった。
ゼロというわけではないけれど、図書委員がカウンターにいるのと、あとひとりだけ。
しかもフリースペースに座っているその女の子は熱心に本を読んでいて、こちらを気にする様子もない。
……よかった、すいてる。
ホッと胸を撫で下ろし、コソコソと室内に入る。そしてとりあえず、フリースペースの隅っこに座ることにした。
約束の場所に来ただけだけれど、すでに大きなミッションをクリアしたような疲労感だ。
音を立てないよう息を吐きながら、チラッと壁掛け時計を確認する。
午後四時すぎ。昨日の記憶が正しければ、雨夜くんは五時に仕事が終わると言っていた。
だったら来てくれるまで、あと一時間ちょっと。
心臓がバクバク鳴って、書架から本を取ってきて読む余裕はない。
かといってなにもしないのでは、余計に緊張が高まってしまう。
どうしよう、なにか気持ちが落ち着く方法は……と考えているうち、わたしはひとつだけひらめいた。
会話の流れを、紙に書き出しておくのはどうだろう。
こういう質問をされたら、こう答える、みたいな。予行練習をしておけば、緊張がほんの少しは薄まるかもしれない。