その日学校に行ってみると、文化祭の飾りはいっさいがっさい撤去されていた。

いつも通りの校門、いつも通りの廊下。

ただよっているのは週明けならではの気だるい空気で、雨夜くんとのことが、ますます夢だったような気がしてくる。


そうして迎えた放課後。

グルグル考えてちっともまとまらない感情を抱えて、わたしはとりあえず、図書室へ向かっていた。


実際のところ、このまま昇降口に直行して、帰ってしまいたい思いもある。

だって、百パーセント挙動不審になってしまうことは間違いないから。

顔を知られて嫌がられてしまう、という恐怖は無くなったけれど、向き合って話をするのは、わたしにはものすごくハードルが高いことだ。


それでも、今図書室に向かって足を動かしているのは……マイナスな気持ちよりも頑張ってみたいという気持ちが、わずかに勝っているから。

会話の練習をしよう、なんて言ってもらえることは、きっともう二度とない。今を逃したら、ずっとコミュ障の自分のままだ。


そして、もうひとつ。

雨夜くんとの大切な縁を、自分の弱さのせいでまた切ってしまうようなことは、したくなかったんだ。


図書室は、南館の四階にある。

家と学校のUターン生活で運動不足なわたしは、息をゼイゼイと切らして、図書室前にたどり着いた。