◇
目覚まし時計やスマホのアラーム。
夜眠るとき、わたしはどちらもかけておくことをしない。
ジリリリとベルが鳴らなくても、起きるから。
ピピピピと電子音が鳴らなくても、悪夢がわたしを、強制的にたたき起こすから。
いじめがはじまった中二のときから、わたしは毎夜のように、悪夢ばかりを見続けるようになった。
罵倒される、リアルな夢。化け物に追いかけられる、ホラーな夢。
怖くておそろしくて、夢の中なのに心が削られて。毎朝、逃げるように跳ね起きてしまうんだ。
けれど……文化祭の翌朝。
「温美! あーつーみ!」
「ん……」
わたしはめずらしく、夢にうなされることなく朝を迎えた。
体が揺さぶられる感覚で、眉をひそめて目を開ける。
出勤用の化粧をほどこしたお母さんが、困ったようにわたしを見下ろしていた。
「いい加減起きないと! 今日からまた授業でしょ」
「え……あ……」
「お母さん、もう家出るからね! カギよろしくね」
せわしない言葉を、理解しないままにうなずく。
小走りで出ていったお母さん。ひとりになった空間で、わたしはまだぼんやりした目で、自分の部屋を見回した。
目覚まし時計やスマホのアラーム。
夜眠るとき、わたしはどちらもかけておくことをしない。
ジリリリとベルが鳴らなくても、起きるから。
ピピピピと電子音が鳴らなくても、悪夢がわたしを、強制的にたたき起こすから。
いじめがはじまった中二のときから、わたしは毎夜のように、悪夢ばかりを見続けるようになった。
罵倒される、リアルな夢。化け物に追いかけられる、ホラーな夢。
怖くておそろしくて、夢の中なのに心が削られて。毎朝、逃げるように跳ね起きてしまうんだ。
けれど……文化祭の翌朝。
「温美! あーつーみ!」
「ん……」
わたしはめずらしく、夢にうなされることなく朝を迎えた。
体が揺さぶられる感覚で、眉をひそめて目を開ける。
出勤用の化粧をほどこしたお母さんが、困ったようにわたしを見下ろしていた。
「いい加減起きないと! 今日からまた授業でしょ」
「え……あ……」
「お母さん、もう家出るからね! カギよろしくね」
せわしない言葉を、理解しないままにうなずく。
小走りで出ていったお母さん。ひとりになった空間で、わたしはまだぼんやりした目で、自分の部屋を見回した。