「じゃあ……とりあえず俺、先生が戻ってくるまでここにいるから」


優しい声で、そう言ってくれた。


「水とか、なにかほしいものない?」


追加で気遣いの言葉が聞こえてきて、わたしは布団の中で、大丈夫だと必死にうなずく。


そのやり取りのあと、少し離れたところでカシャン、と音が聞こえた。

どうやら雨夜くんは、保健室の丸椅子に座ったみたいだ。


シン……と。

嵐が去ったあとのように、静かな沈黙がおとずれる。


まだまだ心音は荒れているけれど、顔を隠せたことが、精神安定をもたらして。

狂っていた呼吸が、普段くらいのペースに落ち着いていく。

頭もゆっくり、働くようになって。けれどそうしたら、次はとてつもない後悔が、わたしにおそいかかってきた。


わ……わたし。なんて多大な迷惑をかけてしまっているんだろう。

今さっき起きたことを順に振り返っていくと、後悔と羞恥で死にそうになる。


わたし、雨夜くんにどれだけ失礼なことをした?

わざわざコインケースを渡しにきてくれたのに、お礼を言うどころか、また逃亡して。

向こうからしたら意味不明な過呼吸を起こして、保健室まで運んでもらって……。


「……っ」


……ごめんなさい、じゃ、すまない。