【職員室にいます】
たどり着いた引き戸には、そんな文字が貼られていた。
雨夜くんがわたしを運んで来てくれたのは、保健室だった。
昇降口を介した南館一階にある、保健室。
まわりにはだれもおらず、そして中に先生もいないようで、空気はシンと静まり返っている。
「とりあえず、ベッド借りよう」
雨夜くんはそう言って、足を器用に使って引き戸を開けた。
わたしを抱えた状態で中に入り、そして、ふわりとベッドに下ろしてくれる。
「寝転べる?」
わたしの背中に丁寧に手をそえて、シーツの上に横たえさせてくれて。
さらには布団もかけてくれて……もう今さらだけれど顔を隠したかったわたしは、急いで布団を頭の上まで引き上げた。
「先生呼んでくるから、待ってて」
「あ……!」
布団の中で、あわてて首を横に振る。
今、先生を呼ばれると困る。この症状をどう説明していいかわからないし、パニックがぶり返してしまいそうだ。
「でも……」
「ち、が……っ、ほ、ほんとに、体調、悪いわけじゃ、なく、て……」
過呼吸はおさまっているものの、水分が飛びきってひどい声だ。
しかもどもりまくっていて、自分でもなにを言っているのかわからない。
けれど雨夜くんには、ちゃんとわたしの気持ちが伝わったようで。