【永田さんこそ、無理しないでね】
【好きなおかずは、卵焼きです。ちょっと甘いやつ】
【おはよう、永田さん】
【そう?永田さんの字、丁寧で俺は好きだけど】
【コーヒー、ブラックのが好きなんだ?すごいね】
【イチゴがのったショートケーキかな。なんか、一番ケーキって感じがする】
【誕生日おめでとう。ケーキ食べた?】
【夜間生です。十六歳で、雨夜涼と言います。たぶん、同い年だよね】
【大丈夫?】
「……っ」
熱い息がこぼれる。
雨夜くんからもらった言葉は、全部、ひとつ残らず嬉しかった。
真っ暗闇が続いていたわたしの日々に、つかの間の明かりをともしてくれた。
数秒置いたのち。わたしは心を決めて、ノートの根元に手をかけた。
心が悲鳴を上げているみたいに苦しい。でもやらなきゃ。破こう。わたしの未練ごと。
もう、終わり。これで、本当に。
指先にぐっと力を入れた……そのとき。
――ガタン。
「……っ!」
教室の出入り口で、音がした。
反射的に、ハッと顔を上げる。そこにいたのは。
……なん、で。
思考が停止して、なにも考えられなくなった。
教室にやってきたのは、数時間前に自販機のところで会った、その人。
わたしが今まさに、つながりをすべて断ち切ろうとしていた……雨夜くん、だった。