……終わらせなくちゃ。

胸に生まれたのは、そんな感情だった。


定まらない歩行をしながら、手でカバンの底を触る。

カバンの底板の、さらに下に入れているもの。それは、雨夜くんとの交換日記に使っていた、青いノートだ。


やり取りをやめてしまってからも、わたしは実は、ノートをずっと持ち歩いていた。

わたしがまた人と繋がることができた、大切な証拠。

これをお守りにしていれば、学校生活をなんとかやっていけるような気がして。たとえ、もう更新されることがなくても。


でも……本当に未練をなくすためには、完全に手放さなきゃいけなかったんだ。

持っていちゃいけない。やり取りしていたページを、破いてしまわないと。

もう読めないようにして、なかったことにして。それから、家に帰るんだ。


そんな風に決意を固めて、本館に入る。

ぺたりぺたりと廊下を踏んで、教室に向かう。引き戸に手をかけると、懸念していた施錠はされていなかった。

文化祭で飲食場所として開放されていて、まだそのままだったみたいだ。


カラカラと引き戸を開けて、中に入る。

そうしてひとり、自分の席についた。


「……は」


儀式を行う前みたいに、ゆっくり深呼吸をする。

そうしてカバンの底からノートを取り出して、ふるえる指先でページを開いた。


やり取りしなくなってから、はじめて開いたノート。

少しぶりに見る、文章たち。