顔を上げてそう言ったら、近距離で視線が交わった。
雨夜くんの目は驚きに見開かれて、そのあと、くしゃりと悔しそうにゆるむ。
「あー……先越された」
深く息を吐きながらそう言った雨夜くんは、わたしにコツンと、痛くない頭突きをお見舞いする。
「……俺も」
雨夜くんの指が、わたしの涙をぬぐう。
ぼやけた視界がクリアになる。
「俺も、永田さんが大好きだ」
そこにあったのは、涙でぐしゃぐしゃになった顔。
完璧じゃない……本当の、笑顔だった。
完
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