「あ、の……こ、ここでお仕事してたんだね!えっと……」
それでもなんとか、絞り出した言葉。ブォンと、また新たに一台の車が通り過ぎていく。
「あ!ス、ストーカーじゃないよ⁉︎ 家、この近くで!たまたま通りかかって……」
「……うん」
またすぐに、沈黙がおとずれてしまう。
そうだ。いつもは雨夜くんがうまく話題を振ってくれていたから、気まずい時間が流れることがなかったんだ。
自分が思っていた以上に雨夜くんが頑張ってくれていたことを実感して、胸が締め付けられるように痛む。
でも、落ち込んでいる暇はない。次はわたしが頑張らなきゃ。
ぎゅっと拳を握り、目の前に立つ雨夜くんを見た。
「……学校」
自分を奮い立たせて、声を出す。
「休学したって……聞いて。その……いきなり、どうして……?」
夜の中に、わたしの声が頼りなく響く。
暗いから、雨夜くんの表情はしっかりとは見えない。
それでも、笑っていないことはたしかだ。つなぎ姿の雨夜くんが、口を開く。
「……うん。できるだけ早く、祖母の手術費を稼ぐためなんだ」
「……!」
「ずっと、治療のみでやってきてて。でも前回のことがあって……どうしても、手術にチャレンジしてほしくて。手術を受けたところで治る可能性はかなり低くて、お金の無駄になるから……って、今までは祖母の意向で、考えてこなかったんだけど」