「……っ」


そこでわたしは息を止め、こぼれんばかりに目を見開いた。


光る赤い棒を振りながら、車に通行止めであることを知らせている、交通誘導の人。

つなぎと反射ベストを着たその人に、すごく見覚えがあったから。


辺りは暗い。でもチカチカしたライトの光や、光る看板のおかげでうつし出される。

すらりと高い背丈。綺麗な二重にふちどられた目。顔の中心を飾る、高い鼻。


探していた……会いたかった、その人。


「雨夜、くん……?」


わたしのかすれたつぶやきは、ブォン、と走り去った車がかき消した。

まばたきもせず、その場に固まる。


……うそ。うそでしょう、こんな場所で。


暗いところだし、他人の空似かもしれない。

でも前に、交通整理のバイトをしていると教えてくれたことがあったから。だから、雨夜くんだと確信できた。


雨夜くんはわたしに気づくことなく、真剣に交通誘導の仕事に取り組んでいる。

凛と背筋を伸ばして、向かってくる車に対して棒を振り、一台一台さばいていく。