お母さんはまばたきもせずに、真剣にわたしの顔を見つめている。

うなずくのも忘れて、必死に聞いてくれている。


「わたし、ね……っ、その人に、助けてもらうばっかりで。その人は、強くて、優しくて……欠点なんてひとつもないって、思い込んで……本当は、すごくしんどい気持ちを抱えてることに、気づけなかったの……。その人の口から、言わせてしまって……っ、その人ね、もう……い、いつも会ってた場所に、来てくれなくなっちゃって……っ」


雨夜くんが休学した。その事実を再認識して、また涙が込み上げてくる。

なんとかこぼさないよう鼻をすすって、わたしは続きを口にする。


「わ、わたしから、会いに行きたいけど……っ、わたしと会う、ことで……またしんどい思い、させてしまうんじゃないかって……」

「……うん」

「そう思ったら、動けなくて……っ、わたし……その人の力に、なりたい、のに……っ」


……話すことって。自分の中から外に出すって、すごいことだ。

自分の中だけで煮詰めていたら、気づけない。でも言葉にすると、気づくことがある。


そう。そうなんだ。だから今、雨夜くんへの感情を取り出してみて、気づけた。