わたしはずっと、いじめにあっていると言わないことで、自分のプライドを守ってきた。
お母さんはなにかあったと気づきながら、でもわたしの意思を尊重して、無理に言わせようとはしなかった。
きっと不安だったのに、わたしを信じると決めてくれた。
ウソかもしれないとどこかで思いつつ、わたしの言うことだけを、事実として受け止めてくれていた。
そういう優しさで、そういう愛情のかたちだった。
「わたし、ね……」
過去を話し終えたわたしは、いったんお母さんから離れ、涙をぐいっと手で拭った。
深呼吸をして息を整えたのち、高校に入ってからのことを話し出す。
「常和高校でも、人と……話すのが、怖くて。最初は、ひとりで過ごしてたの。もうこれから一生、だれとも関わらずに生きよう、くらいに思ってて……」
「……うん」
「でも……とあるきっかけで、ひとりの男の子に出会ってね。その人……もうびっくりするくらい、すごく優しく接してくれて。わたしが普通に話せるようにって、練習にまで付き合ってくれて……。その人がいてくれたから……だから、前向きになれたの。その人のおかげで、わたし今……お母さんに過去を話せてるんだと、思う……でも……っ」