笑わなきゃ。笑え笑え笑え。でも。


「……お母さん」


ぽろり、と言葉を出したとき。

その言葉がふるえて、振動で同じようにぽろりとひと粒、涙がこぼれてしまった。


つらかった日々。ずっと重ねてきたウソ。

募る罪悪感。許せない過去。黒い気持ち。

自己嫌悪。見えないこれから。いなくなった雨夜くん。大切な人。


……限界だった。


「~おかあ、さん……っ」


くしゃっと顔がゆがむ。

ひと粒どころじゃなく、幾筋にもなって涙があふれる。


お母さんはハッと息を吸うと、立ち上がってわたしをぎゅっと抱きしめた。

ただただ、抱きしめた。お母さんの胸の中で、わたしはわあわあと、幼子のように泣いた。


……お母さん、ごめんね。

いっぱいウソついてごめんね。明るい娘でいられなくてごめんね。


ごめんね。ごめんなさい。

もうどうしたらいいか、わからないの。


「わた、し……っ」


しゃくりあげながら、口を開いた。

ずっとずっと、中二のときからウソを重ねてきた。

重ねるたびに戻れなくなって、どんどんひとりぼっちになって、苦しくて苦しくて仕方がなかった。


わたしは、話した。中二のときから高校に入るまでの、すべてのことを。

いじめにあっていたことを。ウソをつき続けていたことを。