まるで、あやつり人形であるかのように、ふらふらと。
ここに向かおう、ここに帰ろう。そんな風に意識することなく、心を手放して家に帰ってくるのは、これで何回目になるだろう。
夜間の教室前で、美和に遭遇してしまったとき。それからこの間、雨夜くんの本音を聞いたとき。
だから、今日で三回目かな。わからない。
……もう、なにも、わからない。
「あ! お帰り温美ー!」
おぼつかない足取りでたどり着いた家。
玄関に入ると、お母さんがリビングからひょこっと顔を出してきた。
お母さんがいるとは思わなかった。
いつも帰りが遅いし、なんならわたしが先に寝てしまっていることもあるのに。
「今日ね、めずらしく仕事早く終わったのよ。もうご飯できてるから、一緒に食べよ!」
呆然とするわたしに、お母さんは楽しげにそう説明した。