わたしを戸惑わせる言葉。

許せるわけがない。でも。許していいわけがない。でも。ずっと、その繰り返し。


しゃがみ込んだ姿勢のまま、壁掛け時計を見上げる。


午後四時四十分。雨夜くんは今、きっとまだ働いている。

どんな気持ちでいるんだろう。やっぱり黒い気持ちに、苦しんでいるのかな。


雨夜くんとわたしが抱えている気持ちは同じ。

でも雨夜くんは、全部あきらめて逃げて、ひとりでいることを選択したわたしとはちがう。

お母さんを恨む気持ちを、自分が完璧でいることで、昇華しようと頑張っていた。すごくすごく、努力していたんだ。


なのにその積み上げてきた努力を、どうしようもない事情で自ら折らざるを得なくて。

それってどれだけつらいことだろう。どれほど耐え難いことだろう。


わたしは雨夜くんに、たくさん気持ちを聞いてもらえた。

でも雨夜くんは、だれにも言えなくて。自分の中だけで、必死に処理して。

そのことを考えると……自分が情けなくて、たまらなくなる。