雨夜くんは、わたしを利用していたと言った。

苦しそうに謝ってくれた。でもわたしは、ちっとも雨夜くんを悪く思っていない。


言われた瞬間はショックを受けたけれど、冷静になってから色々考えたんだ。人と人って、そういうものじゃないのかなって。


なにかしらの利益があるから、付き合いが生まれて、縁が続く。

利益というのは、一緒にいると楽しいとか、気が楽とか。なんでもいい。劣等感がぬぐえる、でもいいんだ。


なんなら、わたしといることで雨夜くんが楽になれるなら、願ったり叶ったりだとすら思う。

そのことに罪悪感をおぼえてしまう雨夜くんは、やっぱり優しすぎるんだと思う。


このまま関係が終わるなんて、そんなの絶対いやだ。会えなくなるなんて無理だ。

でも、じゃあどうしたらいいかって……。



「はあ……」


わたしはここで待つことしか、できないんだ。

更衣室から直行した図書室。書架の間で、わたしはひっそりと、弱音代わりのため息を落とした。