雨夜くんと別れてから、どれくらい時間が経ったのか。

わからない。今が、昼なのか夕方なのかすら、判別できない。


放心状態で家に帰りついたわたしは、ふらふらと玄関に靴を脱ぎ落とした。


買い物に出かけているのか、お母さんはいなかった。

ちょうどよかった。今は、お得意のいつわりの笑みさえ浮かべる余裕なんてないから。


自室に入って、引き戸を閉める。

完全にひとりになった空間で、わたしはへなへなと、膝を落とすように座り込んだ。


宙に、視線を投げる。

耳の奥で……雨夜くんの声がする。


『俺は永田さんを、利用してたみたいなものだ』


……ずっと。


最初からずっと、疑問だったんだ。

雨夜くんみたいな人が、なんでわたしなんかと関わってくれるんだろう、って。


ものすごく納得がいった。ちゃんと理由があったんだ。

雨夜くんは、かわいそうなわたしといることで、劣等感をぬぐっていた。