「書かれてる文字を見たとき……俺、ホッとしたんだ。全日制に通っている立場でも、うまくやれてない人がいるんだって」
「……っ」
「自分の中の劣等感が消えていく気がして……だから、言葉を書いた。心配したとか、優しい気持ちからじゃない。文化祭でのことも、そうだ」
【大丈夫?】
頭に浮かぶ。最初の最初にもらった、綺麗な文字。
そこからやり取りを重ねて、文化祭でたまたま出会って。
そしてひどいパニックに陥ってしまったわたしを、雨夜くんは保健室に運んでくれて。
『き……気持ち悪い、し、ブス、だし……っ、コミュ障で……しゃべりたくても、まともに、しゃべれないし……っ、ぜ、絶対、がっかりされるって思って……』
そこでわたしは、息絶え絶えに、雨夜くんに語ったんだ。
「布団に隠れながらしゃくりあげる永田さんを見たとき……同情したし、いじめたヤツらに怒りがわいたのは事実だ。いじめなんて最低だと思う。でも……俺だって最低だ」
「……っ」
「だって、かわいそうな永田さんを見て……俺はまた、安心してたんだ。全日制なのに、この子は俺より不幸だ……って」
息ができない。
肺の前後がぴたりとくっついたように、酸素が入らない。
「そう思ったら、不安定な気持ちが落ち着くのを感じた。意識してたか無意識だったか、もうわからないけど……でもこの子といれば、劣等感を覚えずに済むって。だから、リハビリしよう、なんて申し出たんだと思う」
「……っ!」