「……必死に、言い聞かせてたんだ。夜間に行ったって、後から巻き返すことはできるって。卒業資格さえとっておけば、大学受験はできるし、自分の価値が下がるわけじゃない……って。でもそんな希望、新生活が始まってすぐに消え失せた」
「……っ」
「今までずっと、すごいだの完璧だの、尊敬するだの。そんな言葉ばかりかけられてきたんだ。でも仕事場では、役に立たない若造扱いで、中卒のくせにコネ使いやがっただとか、色々悪口をたたかれる。体力的にキツい仕事ばっかり、押し付けられる」
耳から入ってくる言葉に、心臓がつぶれそうになる。
雨夜くんから、仕事の愚痴なんて聞いたことがなかった。今の今まで、たったのひとつも。
……そうだ。雨夜くんはいつも、わたしの弱音ばかりを聞いてくれていた。
「仕事が終わって夜間に行っても……そこには、和気あいあいとした空気が待ってるわけじゃない。夜間に行くヤツなんて、みんなワケありだから。はなから関わり合いたくないスタンスの人間だらけだし……明山だって、しょせん学校にいる間だけの関係だ」
仕事の愚痴だけじゃない。今まで知らなかった事実までもが、雨夜くんの中から取り出されていく。